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2025年8月7日

Trip 03 クラシックでありながら、 華やかさも併せ持つボタニカル

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世界”柄”紀行 第3号では、「クラシックでありながら、華やかさも併せ持つボタニカル」の内容でお届けいたします。どうぞお楽しみください。

Trip 03
クラシックでありながら、
華やかさも併せ持つボタニカル

ノルウェー・オスロを代表するカフェ「FUGLEN」の店内。ボタニカル柄のウォールペーパーが、空間にテクスチャーを添えています。

世界最高峰のバリスタの競技大会、ワールド・バリスタ・チャンピオンシップの初代の優勝者は、意外に思われるかもしれませんが、ノルウェー・オスロのカフェから誕生しました。コーヒー通が多いオスロには、コーヒーの味はもちろんのこと、居心地の良いカフェが軒を連ねており、誰もが行きつけを持っているといわれています。そのなかで、1963年に開店して以来、地元の人々に愛され続けているのが、「FUGLEN」です。東京や福岡にも進出しているので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

https://fuglen.no

FUGLENとはノルウェー語で鳥を意味し、看板やロゴにも描かれていますが、そのコンセプトの通り、入れ替わり立ち替わり訪れては、恋人や友人と談笑したり、ラップトップを広げたり、小説を読んだり、思い思いの時間を過ごしています。まさに、鳥が羽を休めるための“止まり木”のような場所です。FUGLENの居心地の良さの理由は、フランクなスタッフと、カジュアルでありながらオーセンティックなインテリアです。実は、FUGLENは3つの顔を持っています。昼間はカフェ、夜はバー、そして、ノルウェーの家具や照明などのヴィンテージを取り扱うショップでもあるのです。店内に足を踏み入れると、経年変化により風合いが増した木製のヴィンテージの家具、あたたかみのある光を発するランプなどが、唯一無二の空気感を醸成しています。それが単調にならないように、木を基調とした内装のアクセントとして使われているのが、ボタニカル柄のウォールペーパーです。同系色で揃えつつ、無地のなかにパターンを組み込み、テクスチャーを変えることで、品格をももたらしています。

ボタニカル柄の歴史を振り返ると、1880年代から20世紀初頭にかけてイギリスで興ったアーツ・アンド・クラフツ運動を主導したデザイナー、ウィリアム・モリスの「いちご泥棒」(1883年)が有名です。一面の草花と、いちごをついばむ鳥たちが描かれたパターンは、19世紀末のデザインの象徴ともいえるでしょう。その後、ボタニカル柄は、アールヌーボーにも引き継がれ、大流行となりました。アールヌーボーがクラシカルな印象なのに対し、ミッドセンチュリーにはポップでビビッド、アイコン化されたボタニカル柄が誕生しました。フィンランドのファッションブランド、マリメッコの「ウニッコ」(1964年)です。ウニッコとはケシの花の意味ですが、デザイナーのマイヤ・イソラは、写実的に描写するのではなく、抽象的にデザインしました。

ウニッコ柄でショーウインドーが彩られた、フィンランド・ヘルシンキにあるマリメッコストア

ウニッコで60年以上、いちご泥棒にいたっては140年以上も世界中で愛され続けるボタニカル柄。安らぎや落ち着き、ときには気分を高めてくれる効果がボタニカル柄にはあり、それこそがロングセラーの所以なのでしょう。

そうは言っても、いきなり大胆でカラフルな、いちご泥棒やウニッコの壁紙は勇気が必要かもしれません。それならば、ボタニカルをモチーフにしながら、よりシックで、デザイン化された、LIMELIGHTの「BOTANICAL」はいかがでしょうか。

萩原健太郎
文筆家。日本文藝家協会会員。デザイン、インテリア、北欧、手仕事などのジャンルの執筆、講演を中心に活動。著書に、『暮らしの民藝』『北欧の日用品』(エクスナレッジ)、『ストーリーのある50の名作椅子案内』(スペースシャワーネットワーク)、『北欧とコーヒー』(青幻舎)などがある。

LIMELIGHTの
BOTANICALシリーズ

LIMELIGHTのBOTANICALシリーズは、葉などの植物のパーツを抽象的な曲線で表現したボタニカル柄が特徴です。また、色展開によって感情や雰囲気を演出し、さまざまなシーンでご活用いただけます。