海外を訪れると、日本とは異なる空間の多様性に驚かされることがあります。
たとえば、カザフスタンのアルマトイのメトロのプラットホームでは、壁や床が渦巻き模様や幾何学模様といったモザイク柄で彩られています。駅という公共空間でありながら、まるで美術館のように重厚で、利用者に優雅な体験を提供してくれます。日本の地下鉄の多くの駅が、機能的でシンプルなつくりであることを考えると、その違いは印象的に映ります。

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世界”柄”紀行 trip05となる今回は、カザフスタン、アゼルバイジャン、スペインにて撮影した写真をもとに「古代ギリシャ・ローマ時代より、日常から非日常まで彩り続けたモザイク」の内容でお届けいたします。どうぞお楽しみください。

中央アジアの国、カザフスタンの都市、アルマトイのメトロのプラットホーム
海外を訪れると、日本とは異なる空間の多様性に驚かされることがあります。
たとえば、カザフスタンのアルマトイのメトロのプラットホームでは、壁や床が渦巻き模様や幾何学模様といったモザイク柄で彩られています。駅という公共空間でありながら、まるで美術館のように重厚で、利用者に優雅な体験を提供してくれます。日本の地下鉄の多くの駅が、機能的でシンプルなつくりであることを考えると、その違いは印象的に映ります。

カザフスタンの首都、アスタナのモスク
中央アジアで最大の規模を誇り、伝統的なイスラム様式と現代的なデザインが融合しているのが特徴
同じく、カザフスタンの首都、アスタナのモスクも、モザイク柄の壮大さを体感できる場所です。床一面に敷かれたカーペットには幾何学文様が繰り返しあしらわれ、天井や壁にも繊細なパターンが広がっています。訪れる人々は、模様のリズムのなかで心を落ち着かせ、祈りを捧げるのです。

アゼルバイジャンのバクーにあるレストラン「Marivanna Baku」
アゼルバイジャンのバクーにあるレストランでは、装飾的なモザイク柄が家庭的な雰囲気な温もりを醸し出しています。床に施されたタイル模様は重厚でありながら親しみやすく、椅子やテーブルクロスと調和することで、単なる飲食の場ではなく、飲食の記憶が残る場に昇華させていました。デザインが「場の記憶」に大きく寄与していることを実感させられる例です。
あらためて、「モザイク」という言葉について触れてみたいと思います。モザイクとは、古代ギリシャ・ローマ時代に広まった装飾の技法で、石片やガラス片、陶片などを組み合わせて一つの絵や模様をつくり上げるものです。宗教建築や宮殿、公共建築などに多用され、細かい破片が集まって壮大な世界観を描き出すことから、長い歴史を通じて人々を魅了してきました。
日本の住まいは、余白や簡素さに美を見出してきました。それらは落ち着きをもたらす一方、個性や豊かさに欠けると感じられることがありますが、モザイク柄を取り入れることで、こうした単調さを打破することができます。キッチンの壁面にアクセントとしてカラフルなモザイクを使えば日常の料理が少し華やかに、浴室に細やかなモザイクパターンを取り入れることで入浴が癒やしの時間に変わるでしょう。ポイントしては、全面ではなく、部分で活用すること。壁の一部、床の一角などにアクセントとして配置すれば、日本の住宅が持つ静けさと調和しつつ、空間にリズムや動きを与えることができます。

グエル公園のモザイクのベンチ
映画や建築の世界でも、モザイク柄は場を豊かにする要素として繰り返し登場してきました。スペインの建築家、アントニ・ガウディが残した建築群はその代表例であり、グエル公園のモザイクのベンチは観光客を惹きつけ続けています。つまり、モザイクは国や文化を超えて人々を魅了する普遍的なデザインなのです。異国のようなリズムを感じさせる模様は、日常を少し新鮮な、特別なものに変える力を持っているのです。
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萩原健太郎
文筆家。日本文藝家協会会員。デザイン、インテリア、北欧、手仕事などのジャンルの執筆、講演を中心に活動。著書に、『暮らしの民藝』『北欧の日用品』(エクスナレッジ)、『ストーリーのある50の名作椅子案内』(スペースシャワーネットワーク)、『北欧とコーヒー』(青幻舎)などがある。
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LIMELIGHTでは、「DYNASTY」「ZELLIC」「ARABIAN」の3つのパターンをご用意しています。いずれも、異国のものに比べると色柄がマイルドなので、日本の住宅に溶け込みつつ、新しい表情を与えてくれるはずです。